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5月20日、佐渡裕がベルリン・フィルにデビューした。武満徹の《フロム・ミー・フロウズ・ワット・ユー・コール・タイム》とショスタコーヴィチの交響曲第5番。フルート・ソロのパユが両曲で朗々としたソロを聴かせ、コンサートマスターの樫本大進もショスタコーヴィッチの2楽章で、遊びに満ちたソロを聴かせてくれた。佐渡は、ベルリン・フィルの音に呑み込まれながらも、相変わらずの熱演。DVDも作成され、売り上げが震災復興に充てられるそうだ。
その80年ほど前の1934年、同じくベルリン・フィルを指揮した日本人がいる。貴志康一である。ヴァイオリン学生としてベルリンに留学し、映画制作をきっかけに、当時の日独文化交流の流れにのって指揮者デビュー。それから1年足らずで、ベルリン・フィルのプルトに立ち、自作交響曲《仏陀の生涯》を指揮した。帰国後に新響(N響の前身)の新進指揮者として活躍を始めてすぐ、28歳で急逝している。
その貴志康一に関する書籍が出版された。私も映画制作に関する論文を中心に、2本寄稿している(http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-7304-8.html)。
- 作者: 梶野絵奈
- 出版社/メーカー: 青弓社
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- メディア: 単行本
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戦前の日本の音楽は、その充実ぶりに比べて研究が追いついていないのが現状。山田耕作、近衛秀麿、大澤ひさ人など海外をまたにかけて活動していた人も多いので、国内の資料だけでは実態がいまいち掴めないというのも一因かと思われる。その中で、この本は1つの出発点にすぎないのかもしれない。貴志に関しても、ベルリンでの調査で新たに見つかったことも多くあったが、力及ばず時間切れとなった問題も多く残されている。(何せ、デビュー映画『十分間の思索』『海の詩』がまだ見つかっていない!)
国内の関連資料を保存してくださっていた遺族の皆さん、また整理して下さっていた芦屋の甲南学園貴志康一記念室の皆さんの長年のご尽力なしには、出発することすらままならなかったと思います。その他にも多くの方にご協力いただきました。ありがとうございました。少しでも多くの方に手にとっていただければと思います。