Musikfest とりあえずまとめ

ベルリンのMusikfestもほぼ終わりを迎えている。
今年はアメリカ特集で、アイヴズ、エリオット・カーターアメリカ出身の作品に加え、シェーンベルク、アイスラー、ヴァレーズらアメリカへ亡命した作曲家の在米中の作品も聴ける機会が多かった。貴重。

いくつか印象に残っている演奏を挙げると…

9月4日 シェーンベルクワルシャワの生き残り》、ヴァレーズ《アメリカ》 演奏:コンセルトヘボウ、指揮:ヤンソンス

アメリカ》は、非常に大きな編成で和声的には不協和音の連続なのだが、そのぶつけ方もきっちりぶつけると美しく響くのが不思議。
ヴァレーズの作品では9月16日のパユのフルート独奏《Density 21.5》も秀逸だった。

9月6日 モートン・フェルドマン《ピアノとオーケストラ》独奏:Emanuel Ax,管弦楽:London Symphnoy Orchestra、指揮:Michael Tilson Thomas

生誕100年のケージの作品が多く取り上げられるなかで、フェルドマンの一味違う繊細を持つ沈黙と音響が光っていた。

9月7日 ハンス・アイスラーヴァイオリン・ソナタ《旅のソナタ》、弦楽四重奏、《雨を描く14の方法》

演奏:Christoph Keller(ピアノ), Peregrini Quartett, Andre Koll

アイスラーは今年は没後50周年の記念年。東ドイツの国家の作曲家として「赤い作曲家」としてのイメージが先行しがち(実際、ブレヒトとの歌曲などとてもすばらしいものも多く残っているけれど)、シェーンベルクの弟子のなかではベルクとウェーベルンの陰に隠れている感はある。しかし、室内楽作品の持つ緻密な対位法が帯びる何とも言えない陰影に魅せられてしまった。今回のMusikfestの一番の収穫かも。《雨を描く14の方法》は、シェーンベルクに捧げられたもので、Joris Ivensの記録映画《雨》の伴奏音楽として作られた作品でもある。本人によればブレヒトのお気に入りの作品だったらしい。「雨」とは、「喪の悲しみ(trauer)」の表現でもあるとのこと。

9月9日 アイヴズ交響曲第4番 演奏:ベルリン・フィル、指揮:メッツマッハー

9月16日 カーター、チェロ協奏曲 独奏:ヴァイレンシュタイン、演奏:シュターツカペレ・ベルリン、指揮:バレンボイム

カーターって、どれを聞いても完成度高い曲で良いな。まだ存命中とは脅威。しつこいが、通して聴いてみても9月5日のセントルイス交響楽団の演奏(指揮:David Robertson)も非常にインパクトが強かった。それ以降の、ベルリン・フィルバーンスタイン(指揮:メッツマッハー)やガーシュイン(指揮:ラトル)が物足りなく思えてしまうほど。

Musikfestは全体的に非常に充実していたが、9月2日の《モーゼとアロン》やアイスラーの演奏会など、集客がいまいちだったのは非常に残念。

備忘のため、アイスラーとアメリカ関係でいくつか参考文献を挙げておく。アイスラーに関しては、全集刊行も進んでいるようで若手研究者も粒がそろっている。

Making Music Modern: New York in the 1920s

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Charles Ives and His Music

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Hanns Eisler: Eine Biographie in Texten, Bildern und Dokumenten

Hanns Eisler: Eine Biographie in Texten, Bildern und Dokumenten

Horst-Weber教授の近著→
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Schweinhardt氏は全集編纂にも関わっている→
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