アンサンブル・アダプター@ドイツ文化センター
あっというまに12月も半ば。今日は、ドイツ文化センターの催し「〈アンサンブル・アダプター/クラングネッツ来日企画2011〉日本とドイツ・新しい音楽の潮流」に顔を出してみる。
Klangnetzはベルリンを中心に活動する作曲家団体で、ベルリンにいたときも幾つかコンサートで見かけた名前(http://www.klangnetz.org/?language=de)。今日の演奏はその団体に所属しているグループ、アンサンブル・アダプターの来日演奏。フルート、クラリネット、ハープ、打楽器の4人により以下の6曲が演奏された。
近藤譲《島の様式》、小櫻秀樹 《Café Bombón》、ヴァルター・ツィンマーマン《Klangfaden》、アーネ・ザンダースの《Tre Canti》、鈴木治行《Leapfrog》、ゼバスティアン・エリコフスキ・ヴィンクラー《Tempora mutantur》。
近藤譲、ツィンマーマンはどちらもフェルドマン風のミニマルな響きだが、変化するプリズムをじっと見つめるように淡々と進む近藤作品に比べ、加速してクライマックスを作り、そこでハントケのテクストを挟んで次第に落ち着いていくツィンマーマンの作品は、その持っている劇的性格というか時間間隔が全然違う。
ツィンマーマンの作品は、ダニエル・シャルルによる龍安寺についての注釈からアイデアを得ているようで、日本の作曲家の作品との関連を意識したようだが、却って根本的な音楽観の相違が浮き彫りになっていて面白かった。
ヴィンクラーの作品は始めは動きが少ないのだが、変奏曲のような形式で次第に飾りが増えていく。構造はシンプルだが、響きはかなり新鮮でもう少しいろいろな曲も聞いてみたかった。小櫻さんの曲は、ハープとフルートという編成で、かなりストレートな感情表現をいとわない(特殊奏法も含め)。
ベルリンには、演奏家や作曲家の自主組織が結構あり、お気に入りだったEchtzeitmusikを運営するLabor Sonorもその一つ。ただ、こちらはどちらかというとアマチュアが多く、パフォーマンスも玉石混交だったが、アンサンブル・アダプターはみな音大できちんと勉強した作曲家学生と演奏家という感じで、演奏も作曲の質も一定の安定感がある。
最近は東京にいながらベルリンを感じる機会がちらほらある。東京都現代美術館の「00年代のベルリン」展も駆け足で見てきたのだが、宗教、移民、Materialなどの重たいテーマに正面からぶつかっている作品が多かったように思う。ベルリンの街角に(地下鉄の駅、橋の下、高速道路の電柱などetc)ゲリラ的にブランコを設置するびっくり動画を集めたMattias Wermke&Mischa Leinkaufの作品は笑ってしまった(http://www.stopmakingsense.de/StopMakingSense/Stop_Making_Sense_-_Mischa_Leinkauf_-_Matthias_Wermke.html、残念ながら、動画はアップされていない)。旧東西ベルリンの交通に関する映像がモンタージュされるなかで、その流れとは全く無関係に無限運動を繰り返すブランコの映像。その非日常的であからさまに嘘っぽいイメージのなかに、美的郷愁と批評性が共存しているのが面白い。ブランコに乗る人の顔は移されておらず、その徹底的な匿名性が不気味さを増している。
閉館まで粘って深川めしでもという狙いはもろくも崩れ去ったが、なかなか面白い展示だった。
最近読んだ本。
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こちらは買っただけ。↓
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とても自分一人の手に負える問題じゃないし、なんか良い先行研究ないかな。文学とか国語学の人たちの方がむしろ何かやってるのかも知れんが。
ブラームス ヴァイオリン協奏曲、バルトーク《青ひげ公の城》、4響、デュトワ@NHKホール
上京した父と秋葉原で待ち合わせ。ヨドバシなどでスタックスなどのヘッドフォン(一つ20万円のものなど)を視聴して冷やかした後、NHKホールへ。バティアシュヴィリ演奏のブラームスのコンチェルトがなかなか良かった。管楽器のゴージャスなサウンドには、アメリカのオケっぽさが十分に出ていた。弱音も強音も音のクオリティは高い。
N響はアメリカのオケっぽくとか、フランスのオケっぽは非常にうまく弾けるような気がするが、ドイツっぽい濃くにおい立つような弦楽器の音とか、燻し銀の管楽器の音とかは一番遠いんじゃなかろうか。自分がアメリカやフランスのオケをあまり生で聞けてないだけかも知れないが。
最近、Amazonでやや衝動買い気味だ。Auf der Suche nach "声に出して読みたい日本語"
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Jean-Louis Agobet@明治学院大学アートホール
アルバン・ベルク協会の特別例会を聞いてくる。フランスから来たJean-Louis Agobet(アゴベ)によるインタヴューと演奏会。演奏は、東京シンフォニエッタ。演奏の質がとても高く、複雑な構造と明晰な響きが同居する作品の魅力を良く引き出していた。プログラムは以下の通り。
チェロとピアノのための《Leben》(2009、日本初演)
フルートと打楽器のための《Spectre》(2008、日本初演)
二本のクラリネットとピアノのための《Les Ombres dansent》(2006、日本初演)
《エクリス、五重奏のための》(2007−2008、日本初演)
特に、ピアノを挟んで2台のクラリネットが演奏する《Les Ombres dansent》は、分散和音のやり取りやユニゾン、またユニゾンのなかでのアタックの差を強調したり、クラリネットの響きを共鳴させるためにピアノを使ったりする難曲だが、響きが溶け合うところは完全に溶けあい、ぶつかるところは明確にぶつかる素晴らしい演奏だった。演奏は板倉康明さんと西澤春代さん。
アゴベは、恥ずかしながらこの会で初めて知った。調性的な響きへの回帰でもなく、戦後前衛的な響きへも固執しない瑞々しい音楽だが、度肝を抜かれるような新しさがあったかと言われると難しいところ。現在、ジャック・アタリがエピローグを書いたオペラ(台本は本人が執筆)を作曲中で、2014年に完成予定とのこと。覚えておきたい。
『音楽文化新聞』復刻
洋楽文化史研究会に初参加。
有馬学さん、片山杜秀さん、戸ノ下達也さんの鼎談+藤岡由紀さんの演奏。
有馬学さんの、戦時中の朝鮮映画に関する発表がとても興味深かった。『兵隊さん』(1944年)という映画で、朝鮮に徴兵制を定着させるためのプロパガンダ映画。
軍の慰問コンサートのシーンを見せてくれたのだが、そこでのオーケストラはほぼ同時録音なのではないかと思うぐらいきちんと弾いて映像と同期していてびっくり。なんと李香蘭も登場するが、さすがにそこはスタジオで撮影、録音したのを背景の映像と重ねたように見えたが。
映画のなかで慰問オーケストラがクラシック曲を演奏していたのだが、それは実際の慰問コンサートのプログラミングとはちょっとずれているようで、そのあたりは今回復刻された『音楽文化新聞』を見ると良く分かるらしい。西洋音楽が、宗主国日本を権威づけるイメージとして機能していたということか。
ちなみに全国の図書館員の皆さん。この音楽文化新聞の復刻版、定価8万5千円で超お買い得です!
注文していたCDが届いた。
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ちゃんこ鍋
昨日、初めてメトロポリタン歌劇場のライブ・ビューイングを鑑賞。演目は《ジークフリート》。演出上、歌手の動きが少なかったのは撮影を意識してのことだろうか。カメラの動きがかえって目につく感じがする。小鳥役の歌手は舞台に上げず、アニメーションを使っていた。幕間のスタッフインタビューで、3D映像を歌手の口と同期させているとか解説されてもスクリーン越しではあまりピンと来なかったな。
ライブ・ビューイング向きの演出(そんなのがあるとすればだが…)ではなかったのかもしれないが、どうなのだろう。次のグラスは演目的に見ても良いが、コストパフォーマンスも勘案すると好んで通うことにはならなそうな予感。
前から気になっていた本をまとめ買い。
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とあるつてでCDもいただいた。ありがたい。
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もう12月か。ちゃんこ鍋をつつきながら気持ちを新たにした晩だった。
季刊「アルテス」
久々に体調を崩していたが回復。
買い物のメモ。
Composers in the Movies: Studies in Musical Biography
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作曲家 山田一雄
東京芸術大学の図書館で、没後20年を機に『山田一雄 自筆譜展』がひらかれている。その展示と関連した片山杜秀さんの講演「作曲家 山田一雄 マーラーと日本的なもののはざまで」を聞いてきた。
山田が東京音楽学校に入学した31年の無調的な響きが支配的な歌曲《闘争――短詩》から、マーラーの影響の強い《若者のうたえる歌》(1937)、代表作《交響的木曽》(1939)、《おほむたから》(1944)を経て、戦後直後に撮られた映画『浦島太郎の後裔』(1946)に至るまでの山田作品を、音源とともに一気に語り切る講演。山田が、プリングスハイム経由によるマーラーへの強い傾倒のもと、交響曲第5番をいかに換骨奪胎して《おほむたから》を生んだのか、といった点が、音源とともに示されるので説得力とユーモアに満ちている。最後には、吉永小百合がピアニストの卵を演じる『父と娘の歌』(1965)での山田一雄出演シーン(チャイコフスキー、ピアノ協奏曲)もたっぷりと見せてくれた。
《おほむたから》を、作曲を通してマーラーと日本的なものの接合を試みた到達点として捉えるのではなく、戦後の映画の分野での活動に注目を促していた点は非常に示唆的。『浦島太郎の末裔』での原始的な声とショスタコーヴィッチのアダプテーションとの対比のなかに、土俗的表現のある種の否定を見出しうる可能性を指摘するあたりはさすがである。(映画の音楽なので、それが即作曲家の声、とはならないのは百も承知の上で)
最近の買物。
Vocal Apparitions: The Attraction Of Cinema To Opera (PRINCETON STUDIES IN OPERA)
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Die Gedichte sowie Tage und Taten: in der Textfassung der kritischen Ausgabe der Saemtlichen Werke
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最近、バディウのヴァーグナー論を読んでいる。英訳でしか読めないが面白い。哲学の分野でのヴァーグナー論の基本文献といえるアドルノやラクー=ラバルトは、ヴァーグナー批判のオチとして必ずシェーンベルクを援用するけど、バディウはあくまでもヴァーグナーに内在しつつその射程を論じている点が新鮮。